▼「残念ながら226匹の犬が安楽死処分になってしまった」。県動物愛護センター職員から2016年度の殺処分数を聞き、犬の最期の瞬間を想像してしまった。館林市が16日に開いたシンポジウム「人と犬が共生するまちづくり」のこと。会場の愛犬家も神妙な表情だった

 ▼迷子などで収容した同年度の760匹のうち、338匹は元の飼い主の迎えがあり、196匹は新たな飼い主に引き取られるなどした。取り残されてしまった犬は、救われようがない

 ▼基調講演に立ったドッグトレーニングインストラクターの鋒山佐恵さんは「捨て犬でも訓練さえ受ければ、人のために素晴らしい働きをしてくれる。犬の可能性を広げることが課題だ」と指摘する

 ▼シンポジウムは、江戸時代に館林城主だった徳川綱吉の政策「生類憐(あわ)れみの令」にちなんで行われた。犬の保護重視の政策として知られるが、捨て子の禁止や病人保護など、生き物すべてを守り共生を目指したとされる

 ▼パネリストとして参加した市史編さんセンター所長の岡屋紀子さんは「命を慈しもうという改革だった。現代の社会福祉や動物愛護の原点」と評価する

 ▼犬の殺処分の数字を綱吉が知ったらどんな気持ちになるだろう。人と犬の共生をキーワードに、豊かなまちづくりを進めようという館林市の取り組みに期待したい。