▼「駆け出しかベテランかは関係ない。相手にはどちらも新聞記者だ」。入社間もない頃、上司にプロ意識を持つよう指導を受けた。経験不足を言い訳にせず、まっとうな記事を読者に届けよとの教えだ

 ▼添削を受けて追加取材を重ねながら要所を学び、再び取材へ向かう。上司に手間を掛けたが、臆せず現場を踏むことが肝心だったのだろう

 ▼古い記憶がよみがえったのは、本県に生産拠点を持つSUBARU(スバル)が新車の最終検査に無資格従業員を充てていたとの記者会見を取材したから。資格取得前の従業員に現場で「実務経験」を積ませたことが問題となった

 ▼上司が付きっきりで指導して技量が十分と判断した場合、監視下で独り立ちさせていたという。検査は有資格者のみとする国の規定に反し、社内規定は資格取得には実務経験を要件としていて、規定自体が誤っていた

 ▼スバルは太田市内2工場で出荷した25万5000台のリコール(無料の回収・修理)を行う。安全技術の高さを売り出してきたブランドの印象悪化は避けられない

 ▼新聞記事と安全検査を並べるのは強引な気もするが、現場から学ぶ重要性は共通する。資格未取得とはいえ検査に当たった従業員のプロ意識も信じたい。それでも安全に関わるだけに、人材育成と検査の適正さをともに担保する仕組みの再構築が不可欠だ。