▼富岡市が企画製作した映画「紅い襷(あかいたすき)~富岡製糸場物語~」を劇場で観賞した。ドラマと歴史ドキュメンタリーを織り交ぜ、3年前に世界遺産となった富岡製糸場の価値や魅力を伝えている

 ▼ドラマ部分は、製糸場で1873(明治6)~74年、フランス式器械製糸技術を学んだ長野県松代の伝習工女、和田(旧姓横田)英の回想録「富岡日記」を基に構成。史実を踏まえ、全国から集まった若い工女の活躍が描かれる

 ▼英が「開けぬ時代」と称した明治維新後の鉄道もない時代、松代の工女たちは歩いて富岡へ向かった。和服姿の一行が峠道をたどり、製糸場の煙突を望む場面から映画が始まる

 ▼伝習工女は官営模範工場で近代的な技術を学び、故郷に戻って高品質な生糸生産の技を広めた。仏人指導者のポール・ブリュナや女性教師との交流、鏑川流域の富岡と似たブリュナの故郷の風景も映し出される

 ▼映画を見て、世界遺産登録前に取材した県職員が「明治の富岡、群馬を抜きに日本の近代史は語れない」と説明したことを思い出した。女性の活躍、国際交流、高品質なものづくり。現代に通じる先進的な活動が明治期の富岡で繰り広げられた

 ▼「歴史上の事実そのものに、感動した」と映画評論家の白井佳夫さん。近代日本を支えた製糸場や絹の歴史には、現代人の心を揺さぶる宝物が詰まっている。