▼小枝にそっくりだけれど、よく目を凝らすと木の一部ではない。シャクトリムシの擬態である。生物がほかの生物や無生物などとそっくりな形や色彩で、第三者をだます現象をいう

 ▼シャクトリムシの場合、木の表面にそっくりの姿で自らを背景に溶けこませることで目立たなくする。隠蔽いんぺい的擬態とも呼ばれる。一種の保護色だ

 ▼自らを広告する標識的擬態というものもあるらしい。一部のチョウは有毒の他のチョウをまねた姿をアピールすることで捕食を免れる。カミキリの一種は身を守るため、ハチの黄色と黒のしま模様に似せる

 ▼擬態を想起するのはあまりに失礼だろうか。安倍晋三首相が9月25日に衆院解散を表明してからの政界の動きである。新党結成や離合集散は本物の姿を隠し、都合の良い姿ばかり見せているように思える。群馬県でも新党くら替え、出馬見送りなど揺れ動いた

 ▼衆院選が10日、始まった。各党の公約に「幼児教育無償化」や「原発ゼロ」など耳目を引く言葉が並ぶ。一方で、大急ぎでつくられた感は否めず、肉付けは不十分だ

 ▼擬態の中には花とそっくりな姿で虫を待ち伏せするカマキリなど、えさを取るという積極的な機能を持った擬態もあるという。公約の中身や候補者の言葉は本物か。票という、えさを得る目的だけの擬態ではないか。よく目を凝らしたい。