▼「父親の暴力から身を守るために空手を習い、殴られたときに受け身を取っていた」「命令には絶対服従。毎晩が地獄」。太田市内で先月下旬に開かれた児童虐待防止を呼び掛けるイベント。県内外の4人が子どものころに親から受けた仕打ちを告白した

 ▼壮絶な経験談に会場は静まりかえった。主催団体は4人を「虐待サバイバー」と呼び、過酷な状況を生き延びた被害者の声に耳を傾けるべきだと強調した

 ▼生まれてくる子は親を選べない。その現実を、おもちゃの景品やネットゲームの抽選「ガチャ」に例えた「親ガチャ」という言葉が今年の新語・流行語大賞のトップ10に選ばれた

 ▼全国の児童相談所が対応した昨年度の児童虐待は20万5千件。1999年度に1万件を超え、約20年で20倍になった。児童虐待に詳しい高崎市出身のライター、今一生(こんいっしょう)さん(56)は「当事者の声が政策に生かされていない」と憤る

 ▼政府は先日の自民党会合で、児童虐待やいじめ問題など子どもの命を守るために新設する組織の名称を「こども家庭庁」とする案を示した。当初は「こども庁」だったが、「子育ては家庭の責任」とする党保守派に配慮した。虐待された当事者にとって、家庭は地獄、戦場なのに

 ▼太田でのイベントには地元の県議や市議が出席し、学校で被害者の話を聴く講演会を開く案も出た。社会全体で虐待への認識を変える必要がある。