▼「群馬県民の日」は秋深まる10月28日だが、県民の日制定が議論された1984(昭和59)年当時、今日の8月21日も候補に挙がっていた。1876(明治9)年のこの日、山田・新田・邑楽3郡と合体し、現在の群馬の形ができたのだった

 ▼都道府県の形は何のよう? と、ネットで見かけた質問コーナーは、ベストアンサーに「栃木=ジャガイモ、群馬=鶴、埼玉=サツマイモ」とある。身びいきとは承知しながら、鶴舞う形が飛び抜けていいと思う

 ▼ところがである。形が立派でも中身の土地の持ち主が正体不明という、怪談じみた問題が全国に広がる。所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也東大客員教授)の今年の調査によると、全国で推計410万ヘクタール、筆数で20%が誰の土地か不明とされる

 ▼この面積は群馬県はおろか関東地方324万ヘクタールを上回る。座長の増田氏が先に問題提起した「消滅可能性都市」と同じく、人口減の影響だ

 ▼土地の利用価値が低下した。相続しても不動産登記が行われない。山林の活用をはじめ地域の活性化事業が進められない。当事者が不明で、増加する空き家の解消とは違った難問だ

 ▼産業の空洞化を何とかしのいできたら、今度は土地の空洞化である。鶴は元気に舞い続けられるだろうか。「国土の死蔵化」とも言われる、そんな寂しい怪談はご免こうむりたい。