▼安倍政権の改造内閣が発足した。群馬県選出議員の入閣があったわけでもなく、特段の新しい政策も掲げられず、「人心一新」で内閣支持率の浮揚につなげたい安倍首相の思惑ばかりが目につく

 ▼急変する支持率とは不思議なものだ。浮ついた人気投票のようにも言われるが、1906年に英国で行われた実験が興味深い

 ▼広場に運ばれた牛の体重を、見物する約800人が予想した。回答の平均値548キロは実測値543キロとほとんど変わらない。個々の予想はばらついても見えざる意思が働くのだろうか

 ▼みんなの意見は案外正しいという「集合知」の一例だ。内閣支持率を考えると、加計学園問題への対応や閣僚の相次ぐ失言で国民の信頼感は揺らいだ。その感覚は浮ついたフィクションでなく、芯を突いているのだ

 ▼内閣の人心一新が、支持率上昇だけを気に掛けた保身の手段とは思いたくない。道元の言葉を借りれば「仏道修行の功をもって代わりに善果を得んと思ふことなかれ」。国民の信頼は、打算を超えた無私の汗を流してこそ回復する

 ▼群馬からも安倍政権の課題は見える。地方創生のお題目はいいが、いたずらに地方間競争を助長して、芯となる国策が心もとない。限界集落、雇用格差、市街地再生、子どもの貧困-。政局の今後の算術よりも、地方の明日を考える内閣でありたい。