▼水生植物の蓮(ハス)は、仏教では極楽浄土に咲く花として伝わる。形や模様は仏具に施され、お盆も近づいて目にする機会が増える。地下茎(レンコン)は食用にもされる身近な植物だ

 ▼植物学者の大賀(おおが)一郎(1883~1965年)は、千葉県で発見された推定約2千年前のハスの種子の発芽に成功し、ハスは「大賀ハス」と名付けられた。その後、大賀はハスが群生する館林市の城沼に何度か訪れ、広い地域に密生する様子を「日本一」と称賛した

 ▼ハスが見頃を迎えた今夏、城沼の一部の群落が、大賀ハスと遺伝子が約90%一致する固有種で、同じ年代から自生し続けていると考えられることが学術調査で明らかになった(20日付本紙)

 ▼調査した愛知教育大の渡辺幹男教授は「これほどまとまった形で純系種が保たれているのは珍しく、天然記念物級だと言っていい」と高く評価する

 ▼今の時季、城沼で人気の「花ハスツアー」のコースとは別の群落だが、学術的な解明は沼全体の魅力を高め、観光振興につながる

 ▼城沼は館林城跡に隣接し、古くから城を守る自然の要害として沼の状態が維持された。水上でゆらゆらと揺れるハスの群落は優雅だ。歴代の城主もお城の上から眺めたのだろうかと、想像をかき立てられる。ハスは8月中旬のお盆に合わせるように、開花のピークを迎える。