▼新鮮な農産物を安定供給する日本の農業システムを、アフリカの農業に生かそうとする国際協力機構(JICA)の事業が県内を舞台にして行われた
▼6月上旬、ケニアや南スーダン、エチオピアなど7カ国の農業普及員9人が、県内各地の農家や農産物直売所を視察した。日本の農業を手本に、自給自足の農業から「売るための農業」に転換し、母国農家の貧困対策につなげる狙いがある
▼館林市の農産物直売所で行われた視察では、IT技術を活用して直売所と農家が在庫情報を共有したり、農家が自ら納入し価格を決める仕組みなどが紹介された
▼「農家は消費者のことを最優先にしていた」「お店は農家と消費者のことを考え、農家と一緒に責任を果たそうと頑張っている」。普及員たちは、ITなどハイテクよりも、農業に携わる人々の姿に感心していた
▼コーディネート役を務めたNPO法人自然塾寺子屋事務局長の森栄梨子さん(35)は「テクノロジーよりも、日本人の勤勉性や責任感、人と人との信頼関係が母国の発展の手掛かりになると受け止めたのでしょう」と話す
▼生産から販売まで、消費者目線を共有する人と人との連携の強さが、日本農業の強みだと感じ取ったようだ。「貧しい母国の農家を少しでも豊かにしたい」。そんな普及員たちの願いがアフリカの大地で結実してほしい。