▼「昔は湿原が真っ青になるほどたくさんのカキツバタが咲いていた」―。館林市堀工町の茂林寺沼湿原で、今では見られなくなった姿に戻す試みが館林市教委やボランティアの手で進められている

 ▼同湿原は貴重な動植物が生息するとして県天然記念物に指定されている。カキツバタはアヤメ科の多年草で、県内自生地は同市と尾瀬国立公園、桐生市の一部とされる希少植物

 ▼しかし、周辺開発や気象変化などで湿原本来の自然が失われつつある。乾燥化が進み、夏は高さ2、3メートルのヨシが覆う。外来植物の侵入も在来種の成長を妨げる。カキツバタ復活は湿原の保護、再生のシンボルの意味が込められる

 ▼湿原のヨシは昭和30年代ごろまで茂林寺や近隣農家の屋根材として使われた。刈り取ることで枯れたヨシの堆積が減り、乾燥化を遅らせた。そこで昨年10月、市内の中学生らがヨシ刈りを実施したを握る」と指摘する

 ▼先月末、自生カキツバタの種を育てた約100株を湿原に初めて戻した。来年5月に花を付ける見込みだが、活動を継続して自然の力で増殖するのを待つ。人と自然との向き合い方が問われている。