▼ネットの書き込みを見て悲しくなった。日韓双方の投稿者が従軍慰安婦問題を巡り、引用もためらうような言葉で非難し合っている。隣国の存在まで否定する攻撃的な内容だ

 ▼韓国の文政権誕生に伴う日韓合意の見直し論議が影響し、反日・反韓の感情はさらに過熱するのだろうか。だが、神経質な状況でも両国民の多くは良識を持って見守っていると信じたい

 ▼2月に来県した韓国木簡学会員20人のことが思い出される。「世界の記憶」登録を目指す上野三碑などを調査し、4月には登録推進協議会の前沢和之氏が韓国を訪れ学会で講演した

 ▼来県の折、学会員と懇談する機会があった。政治問題が会話に入り込む余地はない。朝鮮半島の文化を受け継いだ三碑について、知的探究心がほとばしる生き生きした語り口だった

 ▼高崎市在住の瀬間正之上智大教授の橋渡しで実現したが、政治問題はおろか、登録実現への布石といった発想さえ飛び越えている。登録の成果として将来期待されるような国際的学術研究が、日韓研究者の連携でいち早く動きだしたのだった

 ▼隣国と語り合うべきことは無数にある。意見が違うからといって全否定するのは愚かしい。「君の意見には反対だ。だが、君がそれを主張する権利は命をかけて守る」とは、ヴォルテールが言ったと伝えられる言論の鉄則である。