5月5日は「こどもの日」でした。子どもに焦点を絞って祝日法の趣旨を見ると、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」日となっています。さまざまな祝い方がありますが、この趣旨を改めて考える機会にしたいと、毎年思っています。

 特にこの時季、気になることがあります。子どもを巡る各種データや研究結果です。今年は厚生労働省の「ヤングケアラー」実態調査の発表に目が留まりました。厚労省の規定には「家族やきょうだいの世話、家事、労働など本来大人が担うような役割を日常的にしている18歳未満の子」とあります。調査対象となった公立中学の2年生で約5万5千人、公立高校2年生(全日制)で約4万2千人いることが分かりました。1日平均3~4時間を家族の世話に費やし、7時間以上の子もそれぞれ1割以上いました。

 家庭の事情はさまざまで子どもにケアを頼らざるを得ない場合もあり、背景にある問題を単純に語ることはできません。ただ、社会をつくる大人たちが忘れてならないのは「子ども」とは「学ぶ」ことを最優先に保障されている立場だということです。

 ユネスコは第4回ユネスコ国際成人教育会議で「学習権宣言」をつくり、学習は大切な権利であり、人間の生存にとって不可欠な手段であるとしました。「児童の権利に関する条約」は第28条で、学ぶことが子どもの権利であると述べています。私たちの歴史は多くの悲劇と困難の経験から、人間が自立して幸福に生きていくためには学ぶことが重要だと確認したのです。

 ヤングケアラー調査では、親やきょうだいの世話で学校の課題や勉強ができず進学を諦めたり、精神的に疲れ果てたりした様子が見られ、こうした実態を学校で取り上げることや多くの人に知らせることを望む声がありました。一方で、相談をしなかった理由の最多は「誰かに相談するほどの悩みではない」であり、助けを求める発想が乏しいことが分かります。

 冒頭で紹介した「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」を思えば、この状況に急いで対応すると同時に、「学習権宣言」や「児童の権利条約」、そして日本国憲法の教育を受ける権利を子どもたちに教える必要を感じます。欧米などの教育先進国では、自分のできること(権利)と社会福祉制度などを子どもに教え、社会がどのように自分を支えているかを知らせます。それが孤立を防ぎ、皆が安心できる社会をつくる大人を育てる基礎と考えるからです。

 「困ったら相談する」。それは権利であり大人や社会は声を聞いてくれる。子どもたちにそう伝えたいものです。「児童の権利条約」は1990年に発効しました。子どもたちに教えるためにも改めて読んでみませんか。



共愛学園前橋国際大地域共生研究センター研究員 前田由美子 前橋市小屋原町

 【略歴】公立学校教師や専門学校講師を経て、2002年から現職。専門はジェンダー論、家族社会学。NPO法人ヒューマン政経フォーラム副理事長。千葉県出身。

2021/05/28掲載