▼富岡製糸場近くの国道沿いに先月末、歴史的なまちなみに配慮した茶色の外観のコンビニエンスストアが開店した。富岡市が製糸場周辺を特定景観計画区域に指定し、屋外広告物の色彩を制限しているからだ

 ▼市は2005年、景観法の景観行政団体となり、08年に景観計画を策定。市民と共に製糸場や妙義山の山並みを生かした風景づくりを進めている

 ▼「白川郷の合掌造り民家だけを保存しても景観を守ることにはならない。かやぶきや養蚕、まき割りなどを通してあのような景観がつくられたのだから」。市が先月開いた景観まちづくり講演会で、筑波大の黒田乃生(のぶ)教授は世界遺産の集落を例に語った

 ▼「景観十年、風景百年、風土千年」という見方も紹介。住民が10年関わって良い景観ができ、生活が数代続くと風景、さらに歴史を重ねると風土になるという。「富岡の千年はこれから」と話し、身近な景観と向き合う意義を強調した。茶色のコンビニもその一歩だろう

 ▼妙義地域には、風よけのかしぐねや越屋根のある養蚕家屋が残っている。黒田教授は刈り込んだ防風林や畑、水路を含めた面的な景観の美しさを示した

 ▼風景の感じ方は個々に異なるが、より良い景観は人を引きつける。大量消費社会は 時にまちなみも画一化する。できることから始め、魅力ある風景を守り育てていきたい。