▼前橋市郊外の桃ノ木川と藤沢川に挟まれた自然の地形を生かした場所に、剣術「新陰流」を創始した戦国時代の兵法家、上泉伊勢守信綱が生まれたとされる上泉城跡がある

 ▼信綱が考案し、剣道の竹刀の原型となった袋竹刀を持ち、新陰流の基本の構え「無形むけいくらい」をした像が迎えてくれる。旧家の残る周辺を散策すると、生誕の地を示す看板が随所にあり、住民が郷土の剣聖を大切に継承していることが分かる

 ▼功績を伝える上泉伊勢守顕彰会が信綱を広く知ってもらうためテレビドラマ化に向けた活動を始めたのは5年ほど前。昨年、県や前橋市、前橋商工会議所などが歴史文化を活用した地域おこしをと協力に名乗りを上げ、実現することになった

 ▼信綱は戦国時代に、上州侵略を狙う武田・北条軍に抵抗した箕輪城主、長野業政のもとで奮闘した。俳優の村上弘明さんが信綱役となり、その半生を描いた

 ▼大胡城跡や赤城・小沼周辺など大半は県内でロケが行われ、試写を見た関係者は「箕輪城の合戦シーンは迫力がある。見応えのあるドラマになった」と太鼓判を押す

 ▼新陰流の動きは、顕彰会の会員らが村上さんに伝授し、地元企業などが資金面で協力した。信綱を全国に広め、観光や産業の活性化にも結び付けたいという願いがこもったドラマは3日夜7時からBS朝日で放映される。