▼日本の豊かな食文化に貢献してきたとして、日本醸造学会はこうじ菌を「国菌」と定めている。日本酒やみそ、しょうゆは、高温多湿な風土の中で育まれた国菌を使い、穀物や清らかな水を原料に造られる

 ▼甘楽町の酒造会社、聖徳銘醸と轟みそ生産組合が、それぞれ大吟醸酒と麦みその仕込みを1月から始めた。聖徳銘醸は5~30日、社員が夜間も1時間ごとにこうじ米の温度を確認。布で覆ったり広げたりして菌を増やし発酵タンクに入れた

 ▼轟地区の住民でつくる組合は、現代的な設備の加工所でみそを仕込んでいる。蒸した大麦にこうじ菌を接種し、3日間繁殖させ、煮た大豆や塩、水と混ぜる作業を繰り返す

 ▼轟みその始まりは約90年前。柴山十三郎組合長(78)の祖父たちが小幡組製糸で働く工女に温かいみそ汁を出したいと、麦や燃料のまきを持ち寄って造ったという

 ▼仕込んだたるは、旧稚蚕共同飼育所内に置いて1年近く熟成している。元養蚕農家の柴山組合長は「養蚕とこうじ造りは温度管理が大切な点が似ている。手入れすればいいものができる」と言う

 ▼大吟醸酒は今月下旬に搾り、加熱殺菌した後、冷蔵して5月ごろに新酒として販売する。轟みそはじっくりと寝かせ、塩がなじむ年末ごろから道の駅甘楽などに並ぶ。山紫水明の風土が育んだ伝統の味の出来栄えに期待したい。