▼日本を含む国際社会がこの地球上で実現すべき目標として真っ先に掲げるのは貧困の撲滅だ。国連の行動計画「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標の第1番に「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」と掲げている

 ▼だが、こんな発表に接すると、目標達成は困難ではないかと思えてくる。国際非政府組織(NGO)オックスファムによる世界の保有資産に関する報告書だ

 ▼それによると、世界で最も裕福な8人と、世界人口のうち経済的に恵まれていない半分に当たる36億7500万人の資産額がほぼ同じだという(17日付本紙)

 ▼1年前の発表では世界で最も裕福な62人と下位の36億人が保有する資産は同じだった。貧富の格差は縮小するどころか、逆にますます拡大している

 ▼オックスファムは貧富拡大の一因として、大企業などが政府の規制や国際政策に影響力を及ぼす「縁故資本主義」を挙げた。富める者の資産の3分の1は相続によるもので、43%は縁故主義に関係していると分析。各国の政府や大企業に「人道的な経済」の確立を求めた

 ▼日本でも富裕層が増加する一方、生活保護を受ける高齢者世帯が増加。子どもの貧困も社会問題化している。貧困をなくし、貧富の差を縮めなければ、社会の分断という想像したくない未来が待ち受けている。