「女性の起業を支援する」というと、少し大仰で、上から目線になってしまっていないかと自問自答することがあります。起業という言葉自体に迫力があり、そんなことを考えてもみなかった方々にとっては敷居が高いのかもしれません。一方で単純に考えると、起業とは自分らしさを表現する、ということにほかならないと考えています。

 私はなでしこ未来塾に関わったり、日ごろの事象に対応したりする中で三つのことを軸に動いています。それは少なからず子育てを通じて感じたものもあります。

 一つ目は「今を楽しむ」ことです。子どもが小さい頃、無邪気に遊ぶ姿を見ながら感じたことです。就学前の子どもたちが、なぜあんなに幸せそうなのだろう?と考えたとき、小さな子は「とにかく今を楽しんでいるだけ」と感じました。大人は仕事を進めるうちに「何かを達成しなければならない」という思いが強まりがちです。そんな思いは横に置きつつ、今やりたいことをやる、全力で打ち込む、ということにフォーカスすることで、子どもの頃に夢中で遊んだように気持ちも高揚し、目の前のことを楽しめるのではないでしょうか。

 二つ目は「けがをして学ぶ」ことです。何事もチャレンジしなければけがをすることもありませんが、まずはチャレンジして失敗から学び、修正してより強靭(きょうじん)な肉体をつくるということです。大人になるにつれ、自然と危ない道を避けるようになり、コンフォートゾーンを探してそこに居座りたくなるのは人間の本能であり習性でしょう。少し難易度の高いことに挑戦し、けがをしながらも乗り越えることが成功体験となり、次のチャレンジへの意欲につながるのだと思います。

 三つ目は何事も「1000%で取り組む」ことです。パナソニックを一代で築いた松下幸之助氏は「100%のことを誰かに伝えても、そのうち10%程度しか伝わらないものであり、100%伝えるためには1000%で取り組むべきである」と話したといいます。子どもの頃、絵を描くことに熱中し、気付いたら超大作が出来上がっていた。あるいはピアノが好きでひたすら弾いていたら人に感動を与えるまでになっていた、など。私の場合は料理が好きで人をもてなすことだけを考え、心の底から満足していただくことだけを念頭に取り組むうちに、いつの間にか予約が途切れない料理教室になっていました。手前みそで申し訳ありません。

 全てを実行できているわけではありませんが、自分を見つめ直し、自分に正直に、そして子どもの頃のように全力で取り組むことで、あなたやあなたの周りの方々に良い波紋が生じることになると思います。そのことを、なでしこ未来塾は後押しできる存在になりたいと考えます。



なでしこ未来塾代表理事 桑原海鷹 茨城県つくば市

 【略歴】女性起業家育成を目指す同塾で2019年から現職。筑波大大学院修了後、研究職などを経て、15年にアジア料理教室を起業。中国遼寧省出身。01年に来日。

2021/05/16掲載