本学農学部は2019年4月に新設されました。県内大学で農学部が設置されるのは初めてのことでした。担当する1年生対象の講義では、現代の農学を取り巻くトピックスを紹介し、農や食が抱える問題と解決策について学生と一緒に考えています。

 毎年、初回の講義で「最近の農や食に関するニュースで、あなたが興味を持ったトピックスを教えてください」という小リポートを課しています。本年度は「現代の食品ロス・廃棄問題」が最も多い回答でした。これを踏まえ、今回は近年注目されている持続可能な開発目標(SDGs)と食品ロス・廃棄問題についてデータを用いて述べます。

 SDGsは、30年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標のことです。01年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、15年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されました。SDGsには17の目標が設定されています。食品ロス・廃棄問題は特に「2 飢餓をゼロに」と「12 つくる責任つかう責任」に関連する部分であり、世界の食料分配の問題として捉えることができます。

 世界の食料分配の問題とは、簡潔に示すと「世界には栄養不足状態にある人が大勢いる一方で、多くの食料がロス・廃棄されている状況にある」ことです。国連の報告書によると、19年は世界人口の8.9%に当たる6億9千万人が栄養不足に陥ったとされています。一方で、世界の食料生産量の14%が生産・加工・流通段階(スーパーやレストランなどは除く)で、17%が小売り・家庭段階で、それぞれ廃棄されていると推定されています。

 「飢餓をゼロに」に関連する世界の食料事情をみると、新型コロナウイルスの影響で目標達成までの道のりはさらに遠くなりました。20年は栄養不足人口が最大で8億1100万人まで増加したという厳しい推定が出されています。

 「つくる責任つかう責任」に関連する食品廃棄は、日本でもさまざまな立場から私たちに関係してくる問題です。個人から企業・団体まで対応が求められています。

 SDGsに掲げられた目標は大きなものに見えます。しかし食品ロス・廃棄問題も含め、まずは自分事としてどのように取り組んでいけるか考え、行動に移すことが重要だと思います。その先に、「将来の世代がそのニーズを満たす可能性を損なうことなく、現在の世代のニーズを満たすような開発」イコール「持続可能な開発」の実現があると考えます。

 日々の小さな心掛けから始めてみましょう。

 【略歴】農業経済学、食料経済学が専門。食生活の変化や食料自給率などを研究。信州大助教を経て2019年から現職。兵庫県出身。神戸大大学院博士課程修了。