▼2015年の世相を漢字1文字で表せば「安」―。日本漢字能力検定協会が公募した「今年の漢字」で「安」が最多となったのは、安全保障関連法の審議過程に国民の関心が高まったことや世界で頻発するテロが人々を不安にさせたことなどが理由だった

 ▼戦後70年という節目の年である今年は節目を境に戦後が終焉(しゅうえん)した年との思いを強くする。その一つが日本映画黄金期を代表する伝説の女優、原節子さんの死去だ

 ▼戦前から活躍した原さんは戦後、小津安二郎監督の『東京物語』や今井正監督の『青い山脈』などに出演。日本人離れした美貌で戦後を映す女優として人気を集めたまま、42歳で引退した

 ▼その原さんが先月、95歳で9月に亡くなっていたことが分かった。引退後、公の場から姿を消し、沈黙を守ること半世紀。大女優はこれからも、戦後という時代を映像を通して伝え続けるはずだ

 ▼戦後の終焉を感じさせたもう一つは「今年の漢字」に「安」が選ばれた理由の一つでもある安全保障関連法だ。原さんの旅立ちから2週間後、参院本会議で成立、公布された

 ▼歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にし、自衛隊の海外活動を地球規模に広げる戦後安保政策の大転換。安倍晋三首相は「平和な日本に必要な法的基盤」と説明したが、その是非は来年夏の参院選で国民が審判する。