▼作家の石田衣良さんといえば、『池袋ウエストゲートパーク』や『4TEEN』といった小説が思い浮かぶが、エッセーも少なくない

 ▼『傷つきやすくなった世界で』(日本経済新聞出版社)は2008年に刊行したエッセー集。フリーペーパーに掲載した作品を中心に54編を収録している

 ▼その中の「『でも』の年」に共感を覚えた。大多数が支持している出来事でも疑問や違和感を持ったら「でも」と声を上げる。その積み重ねが自分の考え方をつくり、多様な見方やアイデアを尊重する豊かな社会につながる―。こんな内容だった

 ▼このエッセーを読んで以来、筆者も「でも」とつぶやいてみることにしている。今年もいくつかそんな出来事があった。その一つがふるさと納税だ

 ▼自治体に寄付すると税金が控除される制度。納税者に贈る返礼品の高額化などを背景に寄付が急増しているという。返礼品は自治体のPRに有効で、特産品のため地域経済が活性化し、財政も潤う

 ▼良いことずくめのようだが、「でも」と思ってしまう。地味でも独自の取り組みを展開したり、ユニークな施策だから応援する。そう考えて寄付してもらう方が、長続きするのではないか。制度を否定するつもりはないが、返礼品がなくても寄付してもらえるような魅力ある地域づくり。それを忘れないでほしい。