「音楽には希望につなげる力がある」と力を込める布袋さん(撮影・山本倫子)

 社会を一変させ、人々の暮らしや経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルス感染症。予断は許さないものの、ワクチン接種や治療薬開発などの進展を踏まえて2022年は反転攻勢も期待される。各分野で活躍する群馬県ゆかりのキーマンたちに、コロナが浮き彫りにしたもの、それを踏まえて描く新たな社会の在り方を聞いた。

 ―コロナ下の2年間、音楽業界も大きな打撃を受けた。どんな思いで活動を続けてきたか。

 音楽はいつの時代も人の心を支え続けてきた。音楽には晴れぬ気持ちを解放し、傷ついた心を癒やし、希望につなげる力があることを、僕は自身の経験から知っている。この2年間はプランを立てても変更を余儀なくされるケースが多く、業界全体が苦しんだ。そしてそれは今も続いている。

 誰も経験したことのないこの未曽有の危機をいかに乗り切るか。当初は立ち止まり、考えることしかできなかったけど、音楽のポジティブな力を発信し続けることの重要性を強く感じ、創作活動やライブなど、自分にできる100パーセントの行動に力を注いできた。月並みながらも「みんなで頑張って乗り越えよう」というメッセージが一番大切だ、との思いからだ。

 ―一方でオンライン配信ライブ、発声禁止での有観客公演など新たな形の模索も続いている。エンターテインメントの将来像をどう描くか。

 昨年はマスク、発声禁止、集客定員は半分という感染防止対策を万全にした形で、26本の全国ツアーを行った。観客の皆さんは「自分たちがこのライブを成功させるんだ」という思いを重ね、いつもなら声援で喉をからすところを、心のこもった拍手で手を腫らしてくださった。

 そこには今までとは違う感動が生まれ、どんなルールも気持ちを縛り付けるものではなく、その中でいかに楽しむことができるかを共に模索した貴重な体験となった。

 配信も意義あるトライだと思うけど、やはり生の感動には勝てない。コロナとの共存という考えの下、私たちは私たちでルールを決め、皆で守る未来をつくることが理想だと思う。

故郷に恩返しを

 ―その未来に向け、22年は音楽を通じてどんなメッセージを発信するか。

 コロナも地球環境問題も、「みんながやっているからいいや」ではなく、「自分はこうする」という個々の意識が問われる時代だと思う。しかし自己本位にならず、他者や隣人を思いやる気持ち、誰かの幸せは自分の幸せにつながるのだという「優しさこそが強さ」であることを再認識する必要がある。

 われわれは社会というネットワークで現在に共存している仲間であることを忘れてはいけない。僕は困難な時代だからこそ、胸のすくようなポジティブなメッセージを音楽にのせて力強く発信していきたい。「君の笑顔が隣の人を笑顔にするんだよ」と皆に伝えたいと思っている。

 ―昨年はテーマ曲を提供したGメッセ群馬でのアーティスト活動40周年を記念した公演があり、22年もタゴスタジオ高崎の特別ライブが予定されている。こうした活動に込めた郷土への思いは。

 還暦の誕生日にリリースされる新アルバム「Still Dreamin'」の収録曲のほとんどは高崎のタゴスタジオで作曲した。自分の原点である風景に囲まれて、ギターを始めた14歳の頃のような衝動を思い出したかったからだ。結果、晴れ晴れしい作品に仕上がった。

 また、ワクチン接種会場に提供することで中止を余儀なくされ、再スケジュールされたGメッセ群馬でのライブの大成功は忘れないだろう。

 長きにわたり多くの方々の応援や支えがあってこその布袋寅泰。感謝とご恩返しの気持ちを忘れず、これからもできる限り群馬での活動を続けていきたいと思う。故郷は死んでも故郷ですから。

 ほてい・ともやす 高崎市出身。ロックバンド「BOØWY」のギタリストを経て1988年にソロデビュー。プロデューサー、作詞・作曲家としての活動を含め、数々のヒット曲を手掛け、日本の音楽シーンをけん引する。2012年に英国に移住。世界を舞台に活躍している。59歳。