▼〈故郷を知ることは、郷土愛を育てることである。郷土愛のある子供には、いじめはない。非行も不良もない〉

 ▼2002年に81歳で亡くなった安中市の元小学校校長、半田喜作さんの言葉だ。めいの金井治子さん(76)がまとめた追悼集『紫苑(しおん)の人 半田喜作さんを偲(しの)ぶ』に引用されていた

 ▼郷土史の研究に情熱を注ぎ、『湯浅治郎と妻初』などの著書を残した半田さんの研究者、教育者としての実践を紹介する同書を読むと、経験に裏打ちされた揺るぎない信念であることがわかる

 ▼数ある逸話のなかで、新島襄研究の姿勢が印象的だ。新島の没後100年を記念して1990年、市民らの寄付により小中学生向け副読本として出版された伝記『新島襄』(新島襄刊行会発行)は、平易で正確な記述から、子供に限らず大人にも愛読されてきた

 ▼もとの原稿を執筆したのは半田さんである。山口県萩市を旅したとき、小学生でも読める文体で書かれた吉田松陰の伝記を見つけて刺激を受け、安中でも子供たちにこそ、郷土の偉人である新島に誇りをもってもらいたいとの思いで取り組んだ

 ▼出版に賛同した知人らとともに1年近い編集作業を経て完成させ、地元の小学6年生らに無償で配布した。経緯を知り、伝記を再読した。郷土の子供たちにやさしく語りかける半田さんの姿が浮かんできた。