▼〈はたらけど/はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る〉。いくら働いても暮らしはよくならない。じっと手を見るばかりだ。石川啄木はこの歌を詠んでから2年もたたないうちに26歳の若さで世を去った

 ▼無理を重ねたのだろう。歌人は友人が工面した金を遊興費に充てるなど褒められない一面も持ち合わせていたが、過労が報われない生活苦はいまで言う相当のストレスだったに違いない

 ▼さて、現代の働く人はどうだろう。目立つのは過労や職場での対人関係のトラブルから、うつ病などの精神疾患を発症する人の増加だ

 ▼2014年度に仕事が原因で精神疾患にかかり、労災認定を申請した人は1456人。認定は497人。このうち過労自殺・未遂は99人。いずれも統計史上最多を記録した。本県の認定、申請数とも過去5年で最多だった

 ▼こうした事態に労働安全衛生法が改正され、来月から従業員50人以上の事業所に従業員の心理的な負担の程度を検査するストレスチェックが義務付けられる。いわば、心の健康診断だ

 ▼啄木にはこんな一首もある。〈こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂(しと)げて死なむと思ふ〉。検査は事業所にとって負荷となりそうだが、従業員の心の病は事業所の浮沈に大きく影響する。快く働ける場に改善するため、検査を役立てたい。