▼かさ上げした広大な土地を整備する何台もの重機がせわしなく動く。東日本大震災の巨大津波にのみ込まれた三陸沿岸の岩手県宮古市田老(たろう)地区は、復興への歩みを進めていた

 ▼震災から4年7カ月がたった先月末、宮古観光文化交流協会による「学ぶ防災」に参加、地元ガイドの案内で視察した。平均で高さ16メートルの津波が押し寄せ、死者・行方不明者は181人に上る。明治以降、2度の大きな津波で壊滅状態となった

 ▼1933年の被害の翌年から築いた防潮堤は「万里の長城」とも呼ばれる国内最大級の総延長2.4キロに上った。だが、東日本大震災の津波は高さ10メートルの防潮堤をやすやすと乗り越えた

 ▼三陸沿岸には「津波てんでんこ」という言い伝えがある。津波が襲ってきたら肉親がいても構わずに、てんでんばらばらに一刻も早く逃げろとの意味だ。非情にも映るが、自分の命は自分で守る。田老地区でも語り継がれてきたが、巨大防潮堤への過信が住民の逃げ遅れを招いたとの指摘がある

 ▼これを教訓にガイドが繰り返した。「次の世代に伝えることが大事なんです」。「学ぶ防災」を修学旅行に組み込む学校も目立っているという

 ▼海なし県に住んでいると、津波は現実的ではないが、いつ、どこで遭遇するか分からない。「津波てんでんこ」。頭の片隅でもいいから刻んでおきたい。