▼京都西陣と並び称される織物産地の桐生市では、いまも暮らしに和装が根付いている。祭礼や式典、祝賀会では 女性だけでなく和装の男性も多く、着こなしに桐生人の粋を感じさせる

 ▼秋が深まる中、和服で日本酒を楽しむ会が開かれた。市文化協会長の大和建昭さんの呼び掛けで毎年開いており、ことしも80人が民謡を楽しみながら酌み交わした

 ▼振る舞われたのは近藤酒造(みどり市大間々町)の「赤城山」。純米スパークリングで乾杯した後、全国新酒鑑評会で何度も金賞に輝いた特別大吟醸が饗(きょう)され、切れの良い淡麗辛口がのどをすり抜けた

 ▼酒飲みと言えば歌人の若山牧水が有名だ。〈足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜は立ちて待ちをる〉。酒を詠んだ歌を多く残しており、どれも「わが意を得たり」とばかりに共感を誘う

 ▼長男の旅人さんは牧水最盛期の酒量を尋ねられ「朝一升、昼一升、夜一升でした」と答えているが、どうやら誇張でもないらしい。肝硬変のため43歳で亡くなったのもむべなるかなである

 ▼アルコール健康医学協会は適正飲酒の10カ条を定め、週2日の“休肝日”を提唱している。酒飲みにとってはつらい一日となるが、休肝日明けの一杯は格別だろう。〈それほどにうまきかと人のとひたらば なんと答へむこの酒の味〉。牧水の歌にまた膝を打った。