県助産師会は1998年に「いのちの大切さを伝える出前講座」をスタートさせました。それまで前会長の鈴木せい子さんが個人で行っていた講座を組織として取り組むことによって、より多くの子どもたちや保護者らに「いのちの大切さ」を伝えられるようになりました。2020年度はコロナ禍に見舞われながらも、小学校を中心に91校の約9千人を対象に開催できました。事業開始からの受講者は累計で33万人となります。

 講座で届けたいメッセージは、命に寄り添い命の誕生に関わる助産師が感じている「いのちの大切さ」です。オリジナルの教材などを使った体験学習を重視し、単に聞くだけではなく心に響かせ記憶としてしっかり残せるよう工夫を重ねてきました。

 受講した子どもたちや保護者の内面の変化は大きく、自らの存在意義を見直し、自信を持って自分を大切にしていこうという気付きがあります。保護者が一緒に参観することで、改めて子どもが生まれた時のことを思い出し、子どもとの関係性を振り返る良い機会となっているようです。24年目を迎え、開始当初に受講した子どもたちが成人して親となり、または教師となって再会することがあります。「当時の講座は今でも印象に残っている」と話してくれることもあり、成果を実感します。

 講座は「生まれてくることのすごさ」「生きていることの素晴らしさ」と自らの「生きようとする力」を伝え、自己肯定感を育むことを目的としています。

 残念ながら、予期しない妊娠や新生児の産み落としなど、痛ましい事件は後を絶ちません。若者世代に性に関する正しい知識を普及し、自らのライフデザインについて考えてもらう思春期教育としての性教育は必要です。ただ、「自分なんてどうなってもいい」と自分を大切にできない若者に対して性教育を行っても、相手を思いやる気持ちを育むことは難しく、当然予期しない妊娠は避けられないことが想像できます。

 このような観点から、子どもたちには「いのちの講座(教育)」を第1段階とし、次の第2段階として「性教育」を行うべきだと考えています。

 講座は20年度までは県委託事業としても実施できていたため、県内どの地域においてもニーズに対応できていました。しかし、21年度から学校やPTA、市町村教育委員会の予算での対応に変わり、学校の考えや予算面によって地域格差が生じてしまっています。未来を担う群馬の子どもたちに、自己肯定感を育む「いのちの大切さを伝える出前講座」を受ける機会を等しく提供したいと考え、各方面に働き掛けています。

 【略歴】助産師として35年活動。1996年、伊勢崎市内に出張型の助産院を開業。2020年8月から現職。群馬大学医療技術短期大学部専攻科助産学特別専攻修了。

2022/1/3掲載