北欧の子育ては多くの場合、性別にかかわりなく皆で行います。子育て支援の先進的なモデルがたくさんあり、たびたび研究対象となり紹介されます。

 今回はスウェーデンの子育てを支援する施設について触れたいと思います。公設でも民家のような温かい雰囲気が特徴です。北欧に住む知り合いによれば、基本的に「ドアをたたく人があれば誰でもウエルカム」の風土で、その施設も「誰でもいつでもどうぞ」という姿勢です。コーヒーやクッキーが置いてあり、自由に資料や本などを読むことができます。カウンセラーや看護師、医師らがいて、相談などに対応してくれます。

 施設はコミューンという行政区にはおおよそ設置されていて、市民に身近な施設です。妊娠中から産後の子育て期は主に父母をサポートし、思春期以降は子どもも含めて見守ります。父母も子どもの年齢(月齢)ごとにグループ化され、定期的に集まって悩みやつらさを共有し励まし合います。必要であれば専門家がアドバイスし、子育てが「孤育て」にならず、仲間や助けてくれる人がいることが安心につながっています。

 こうした場があると、問題になる前の「何となく困っている」段階で誰かに話せます。仲間も専門家も顔見知りなので、ささいなことを気軽に相談でき、問題になる前に対処できます。

 フィンランドにもネウボラ(「助言の場」の意)というこれに似た施設があります。日本の厚生労働省はこの施設をモデルに子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)を整備しようとしています。これが広がり、充実すれば子育て支援の有効性は今よりも高まると思います。

 しかし、日本の場合「母子支援」になりがちな点が気になります。子育てが大変そうな母親を支援する、という姿勢がまだ強く見られます。母親への支援は悪くないのですが、父親も対象に入れることが重要です。前にも述べましたが、日本では母親の重い負担が問題なのです。一人で頑張らなければならないことが子育ての困難・問題を多く生み出していることを考えれば、母子支援を軸とする従来の支援は変える必要があるでしょう。母親が孤軍奮闘する育児は、気になることがあっても「これくらいのことで相談したら駄目な親だと思われるかも」とか、「おおらかに育てられない自分が未熟なんだ」と自分を責めることが多く、相談利用は進みません。「相談のハードルが高い」と言われる状態です。

 信頼関係がある中でいろいろと聞ける場があれば、母親にとって子育ては楽しいものになります。もちろん父親にとっても同様です。そうした場があれば父子関係は良好で確かなものになりますし、母子関係や夫婦関係にも良い影響がもたらされるでしょう。



共愛学園前橋国際大地域共生研究センター研究員 前田由美子 前橋市小屋原町

 【略歴】公立学校教師や専門学校講師を経て、2002年から現職。専門はジェンダー論、家族社会学。NPO法人ヒューマン政経フォーラム副理事長。千葉県出身。

2021/04/01掲載