▼秋の虫たちの夜の演奏会がにぎやかになってきた。前橋地方気象台の生物季節観測によると、ことしのエンマコオロギの初鳴きは8月9日で、ススキの開花は同18日。平年よりそれぞれ6日、16日早い

 ▼きょうは二十四節気の白露(はくろ)。夜間に大気が冷え、地表近くの水蒸気が露になって草花に宿るころとされる。猛暑の名残の熱帯夜も去り、季節は暦通り着実に進んでいるらしい

 ▼〈土くれにはえて露おく小草かな〉(村上鬼城)。境涯の俳人と言われた鬼城が目を向けたのは、日が昇ればたちまち消えていく小さな露。その白露にぬれてきらめく雑草に命の存在を見て取ったのだろう

 ▼白露を「しらつゆ」と読めば、かつての日本海軍の駆逐艦の名でもある。マリアナ沖海戦を目前にした1944年6月、米国潜水艦の雷撃を回避しようとして日本のタンカーに衝突、太平洋に沈んだ

 ▼この白露をはじめ「時雨」「夕立」「涼風(すずかぜ)」など、主に気象の名を付けた白露型駆逐艦10隻はすべて終戦までに戦没している。日本の来し方を振り返り、あらためて非戦を誓った戦後70年の夏が過ぎた

 ▼8日は自民党総裁選の告示日でもあり、安倍晋三首相が再選される見通しだ。安保法案の審議は参院での採決を見据え、ヤマ場を迎える。虫たちの演奏を聞きながらでもいい。この国の未来をしっかり考えたい。