サファリで死んだ動物はどうするのですか?とたびたび聞かれる。サファリで死んだ動物は、私たち獣医師と飼育員が解剖して死因を追究し、葬り、今後の医療に役立てている。

 サファリでは約100種1千頭羽の動物が生活している。獣医師として、全ての動物が健康に寿命を全うできることが一番の願いである。しかし、動物も人と同様に風邪のような症状になることもある。群れで生活している動物は外傷を負うこともある。そして、飼育されて長生きしたからこそ、体に障害が出たり、がんになったりしてしまうこともある。

 野生動物は自然界では弱みを見せると他の動物から攻撃されてしまうため、ギリギリまで症状を隠す習性がある。そのため、病気であることに気付くことも難しく、毎日動物の状態を観察し、少しの変化も見逃さないことが重要になる。

 異変を感じたら飼育員と協力して、その動物の状況でできる検査や治療をする。動物種によって生態が異なるため、保定してできるか、麻酔が必要となるかなどを相談して治療方法を決定する。ペットのように人になれているわけではないので、できることが限られてしまうこともあるが、最善の方法を考えて対応している。

 もちろん、本当に健康で、獣医師と一切関わらずに寿命を全うする個体もいる。長期にわたって治療を続けた後、死ぬ個体もいる。死産の場合もあるし、生まれながらに弱くて、衰弱してしまう動物もいる。

 飼育している動物が死ぬのは一番つらいことである。しかし、死んだ個体から学べることはとても多い。解剖で得たたくさんのデータを蓄積することで、その動物の健康状態を理解することができる。それは今後の飼育や病気の発見にもつながる。

 治療していた個体の死後の解剖もとても勉強になる。自分たちの診断が正しかったのか。何か見落としていなかったか。もっとできることがあったのではないか。そうした思いは常にあるため、答え合わせになるとともに、その情報を今後、他の動物にも応用することができる。

 そして、現在ではそのような大事な情報を全国の動物園や水族館、野生動物の研究者たちと共有することもある。自分の得たデータが、他の動物園の動物や野生の動物に役立つこともある。

 このような貴重な経験ができる仕事の環境はとても素晴らしいと感じている。動物の死はとてもつらいことではあるが、多くを勉強させていただいている。そして「お疲れさま。ありがとう」と伝えて送り出す。

群馬サファリ・ワールド獣医師 中川真梨子 富岡市南後箇

 【略歴】獣医師として九州のサファリパークに約4年勤務後、2015年7月、群馬サファリ・ワールド入社。動物の健康管理や治療を担う。北九州市出身。麻布大卒。

2021/03/31掲載