▼「審議を通じて議論が深まった」「国民の理解が進んだ」。そのような言葉に納得できた国民はどれほどいるのだろう

 ▼集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案がきのう、衆院平和安全法制特別委員会で自民、公明両党の賛成により可決された。110時間を費やしながら、本当に議論し尽くされたのか。国民が今、知りたいことが語られたとは到底思えない

 ▼歴代の内閣が、憲法に基づき認められないという立場をとり、また、憲法学者の大半が「違憲」ととらえた法案である。日本の安全保障政策の大転換は、戦後70年間、この国が貫いてきた平和主義、専守防衛の理念を変質させるものでもある

 ▼〈「非現実的なまぼろしにすぎない」と、あなたがたは言うだろう。しかし、(略)むしろ、武装しない平和こそ、唯一可能な平和ではないのか〉

 ▼あらゆる戦争を否定する「戦争絶対的廃止論」を訴えた内村鑑三が大正時代末に発表した英文論文「新文明」にこんな言葉がある。それから20年後につくられた平和憲法の精神と重なっている

 ▼安倍晋三首相は、採決に先立つ質疑で「十分な理解を得られていない」「理解が進むよう努力したい」と述べた。それが平和を守るために 必要なのだとすれば、性急に決めるのではなく、根本から丁寧に議論をし直し、懸念や危惧を払拭(ふっしょく)してほしい。