金魚は人の手が加わらないとフナの姿に戻ってしまうという―。

 金魚は人間が作り出した生き物であり、日本に入ってきたのは室町時代ごろと言われている。長い歴史の中で人間のエゴや欲望、美への探究心によって品種改良され続け、今の姿に至る。その美しい姿は生きた彫刻とも表現される。金魚も人間を魅了することで美しい姿、品種を維持しているのであろう。まるで人間をうまく利用し、種の保存をしているようだ。

 私は小学生の頃から生き物が好きで、特に水辺の生き物に興味があった。金魚、メダカ、ドジョウ、ザリガニなどを飼育した。金魚は夏祭りの金魚すくいで手に入れ、飼育するという経験しかなかった。

 東京に上京後、何か趣味を見つけたいと思い、ひらめいたのが金魚の飼育だった。最初は近所の祭りで金魚すくいをしたが、都内で冬でも金魚すくいをできる場所を巡ったり、アクアリウム関連のイベントに行ったりした。イベントでは、同じく金魚や生き物を好きな人たちと知り合うことができた。

 私が“金魚沼”にはまったきっかけは、一人の高校生との出会いだった。年に2回、埼玉県加須市で養殖魚まつりが開催される。そこで、当時、高校2年生の金魚界の若きエースと出会った。彼は中学生の頃から金魚品評会に自家産の金魚を出品し、好成績を収めている。自宅の庭にはまるで業者のような飼育設備もあり、素人の私にとっては次元の違う世界だった。しかし、何度か仲間と集まり美しい金魚を見せてもらううちに、それまで以上に金魚に魅了され、次第に金魚の仔引きや品評会への出品にも興味が湧いてきた。そして、先輩たちにサポートしてもらいながら、仔引きや品評会に挑戦し始めた。

 金魚の品評会は、静岡県金魚品評大会(浜松市)と金魚日本一大会(愛知県弥富市)が二大大会だ。全国の愛好家が自慢の金魚を持ち寄り、美しさを競う。私は「茶金」という品種を見よう見まねで仔引きし、育て、出品した。金魚日本一大会で、運良くこの茶金が親魚と当歳魚ともに部門優勝をいただくことができた。洗面器をあでやかに泳ぐ姿は、まるで運動会で頑張るわが子の晴れ姿。順位も気になるが、やはり愛情を注いできたわが子はどんな素晴らしい賞を取った金魚よりかわいらしく、いとおしく見えるのだ。人間のエゴだが、そこには二人三脚で歩んできた金魚と飼い主の絆があるように感じてしまう。

 金魚は本当に奥の深い生き物でありながら、幅広い層から親しまれ、さまざまな飼い方や楽しみ方もできる。きっとこれからも美しく進化し続けるに違いない。やはり金魚は人間を魅了してやまない生き物である。



俳優、金魚愛好家 中嶋秀人 東京都

 【略歴】ドラマ「ドクターX」やCM「エバラ黄金の味」に出演。手話を通じた俳優業にも取り組む。社会福祉士や保育士などの資格を持つ。前橋市出身。

2021/3/24掲載