20年前、中国から日本に行く時はワクワクと希望に満ちあふれ、出発のその日が待ち遠しかったことを今でも鮮明に覚えています。

 初めての日本での生活は茨城県つくば市で始まりました。14年間を過ごし、紆余(うよ)曲折がありながら、徐々にコミュニティーも形成され、自宅での料理教室も軌道に乗っていきました。

 ところが3年前、夫の転勤によって縁もゆかりもない太田市に移り住むことになりました。それまでの生活スタイルが一変し、ゼロからのスタートとなったのです。気持ちを切り替え、地域を詳しく知ろうと車で街を走ったり、スーパーを巡りながら食材の情報を仕入れたりしました。知り合いが少なかったこともあり、家庭訪問にいらした息子の小学校の先生をつかまえ、2時間雑談してしまったこともありました。何かできる仕事はないかと商工会議所や市役所、行政センターを回ったり、友達をつくりたくて英会話講座や陶芸講座に通ったりしました。

 群馬ライフの中で大きな転機となったのが、太田市主催の女性創業塾に参加したことです。そこで起業仲間や行政とのつながりができました。起業に関心のある30人が集まったプレセミナーで、新天地でも楽しく仕事をしていける希望の光が見えたときは鳥肌が立ちました。

 起業仲間から刺激をもらい、4カ月のブランクを経て料理教室再開への一歩を踏み出しました。お客さんが一人も集まらなくても仕方ない、くらいの覚悟を決めて再開しましたが、つくばと太田で出会った仲間たちが応援に駆け付けてくれたおかげで、無事に群馬での料理教室が実現しました。よそから来て言葉のなまりもひどかった私ですが、皆さんがとても温かく接してくださり、短い期間で太田市民として溶け込むことができた気がします。

 特徴的だと感じたのは、町内の祭りやイベントが多く、昔ながらの近所づきあいも盛んな点です。これまで東京、茨城、千葉に住みましたが、太田のように近所の八幡様で獅子舞踊りに興じたり、子ども会や体育協会で集まったりということはありませんでした。人と人との距離が近いこと。それが私にとっての群馬の印象です。

 今、私が所属しているなでしこ未来塾も多様性を許容してくれる素地があります。外国生まれの私が代表に選ばれ、県外から参加するメンバーもいます。自ら心を開いて積極的に関わろうとすれば、受け入れてくれる方々が大勢いることが私にとって太田の最大の魅力です。

 あっという間に3年がたち、この4月で太田を離れることになりますが、この先どこに行っても私の群馬愛は一生続くことでしょう。



なでしこ未来塾代表理事 桑原海鷹 太田市新井町

 【略歴】女性起業家育成を目指す同塾で2019年から現職。筑波大大学院修了後、研究職などを経て、15年にアジア料理教室を起業。中国遼寧省出身。01年に来日。

2021/03/21掲載