創作こけしは自由だ。決まったデザインがない。それも大きな魅力なのだ。作り手一人一人が感性をふんだんに生かし、それが親子や兄弟関係にあっても、全く違う特徴を有するのである。

 しかし、いざ自分自身でデザインしようとすると、絵を描く趣味すら持っていない私には、「ご自由にどうぞ」な状態は、それはそれでとても困るのだ。夕食のリクエストを募り「おいしいならなんでもいい」と言われてしまった主婦(夫)の哀愁と苦悩がお分かりだろうか。それと同じものが私を襲ってくるのだ。

 なおかつ、私はなかなかのあまのじゃくなので、今までにないようなこけしを作りたいと考えている。つまりは、絵が下手な素人のくせに、個性的かつ魅力的なこけしを作りたいのだ。望むのは私の勝手であろう。

 こけしのアイデアを出すべく、まずは既存の群馬のこけしについておさらいする。群馬のこけしといえば代表的な形は着物でおかっぱ頭のこけしだろう。表情や着物の柄など、作家によってさまざまなバリエーションがあり、どこか郷愁を感じられて日本的だ。かわいらしくデフォルメされたこのデザインは外国人観光客に大人気で、輸出も盛んに行われている。

 なるほど、ではこのタイプのこけしはひとまず作らないようにしよう。いや、むしろ人の形でなくてもいいのではないか。立っていなくてもいいのではないか。「今までにないこけし」にこだわるあまり、思考が極端になっていき、とにかく思いついたこけしを作り、その中でいい作品ができればラッキー、と結論付けた。

 そうなれば、ひたすら作るのみ。ある日はスイカに乗ったクリスチャンのタコのこけしを作り、またある日はピンクグレープフルーツに入ったおじさん型の妖精のこけしを作った。

 そうした最中、思いついたのが「ある日の夢」と題した、クジラをモチーフにしたこけしである。木を立てるのではなく、寝かせることでクジラに見立てるのだ。そして背中には歌川国芳の浮世絵を描いた。地球最大の肉食哺乳類であるマッコウクジラが、自分を大きく見せるために背中に入れ墨をしている、というアイロニカルな作品なのだが、制作意図についてはひとまず置いておこう。

 ともあれ、この一風変わったクジラのこけしが、先日県庁で行われた「全群馬近代こけしコンクール」で県知事賞をいただいた。絵が下手な素人でも、いろいろ試せば面白いこけしが作れるということだ。

 私が地域おこし協力隊の活動の中で一番大切にしているのは実験と失敗だ。そして、そんな私の活動が成り立っているのは、その失敗を周りの方々が寛容に見守っていてくれるからなのだろう。



渋川市地域おこし協力隊員(創作こけし技術習得・継承) 大野雄哉(渋川市)

 【略歴】おおの・ゆうや 専門学校を出てからエレキギターメーカーに勤務後、2019年9月から地域おこし協力隊員として活動。作品をインターネットで販売している。東京都出身。

 2021/3/19掲載