▼桐生市のシンボル吾妻山が日々、緑の色合いを深めている。登山道で耳を澄ますとシジュウカラなど春を謳歌(おうか)する野鳥のさえずりに包まれ、心地よい風が吹き抜けていく

 ▼萌木色、若苗色、鶯(うぐいす)色。これは春を感じさせる緑色系の伝統色。日本では古来、呼び名を付けてさまざまな色を生み出し、その移ろう色彩は万葉集や源氏物語で恋や人生のはかなさまでを表現した

 ▼重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に「天然染色(そめいろ)研究所」を構える田島勝博さんが県産生糸を使い、草木染で48色を再現した。折り畳み式の収納ケースを開くと、まるで明かりがともったように生糸が輝きだす

 ▼桜色や朱鷺(とき)色、狐(きつね)色など現代人になじみの色もあるが、名前からは想像できないものもある。「甕覗(かめのぞき)」はかめに張られた水に空の色が映ったような淡い藍色。「苦色」はいかにも苦そうな粉薬のような薄茶色だ

 ▼田島さんは40年前から染めと伝統色の研究に取り組んできた。「染めや織りが底流にあるからこそ、世界遺産の富岡製糸場が輝く。絹の良さ、伝統色に秘められた由来や物語をもっと知ってほしい」と話す

 ▼予約すれば指導も受けられる。きょうは重伝建で骨董(こっとう)市や買場紗綾市(かいばさやいち)、有鄰館まつりが開かれ、桐生がもっとも華やぐ一日。伝統色に関心を寄せながら歩けば、きっと新たな発見があるに違いない。