▼アフリカで誕生した現生人類は、それまでの石器だけの道具とは違う、石刃を柄につけた狩猟具や解体具も持って世界に拡散していった

 ▼この新しいタイプの道具のおかげで世界の多様な環境に適応して、それぞれの生活文化をつくりだしたのだ。文化人類学者の川田順造さんは著書『〈運ぶヒト〉の人類学』(岩波新書)でこう書き、次のように指摘する

 ▼ヒトをヒトたらしめたのは二足歩行を始めたことにより、自由になった両手も使い、新しい土地で生きていくのに必要な道具を運ぶことができたからだ

 ▼〈運ぶ〉という能力で世界各地に広がったヒト。その〈運ぶヒト〉の歴史に新たな一ページが加わるのだろうか。いつでも体に装着して持ち運びできるウエアラブル端末。肌身離さず使えるIT(情報技術)機器のことだ

 ▼すでに米国や日本、韓国などの先行企業から、通話やメールの送受信、健康管理、音楽再生などの機能をもつ腕時計型、眼鏡型などさまざまなタイプの製品が開発され、発売されている

 ▼ITを社会や経済に浸透させてきた米アップルもきょう、腕時計型端末を日米などで発売する。「スマートフォンの次」の成長分野と目されるウエアラブル端末だが、ヒトとテクノロジーの関わり方に新しい扉を開くことができるのか。〈運ぶヒト〉の一員として動向を注視したい。