▼「奇跡」と呼ばれる勝利がある。1996年、アトランタ五輪のサッカーで日本がブラジルから挙げた1勝は「マイアミの奇跡」と記憶される。前橋育英高校出身の故・松田直樹さんも先発メンバーだった

 ▼古くは74年、峠を越えたと見られていた32歳のモハメド・アリが無敗の若き王者ジョージ・フォアマンをKOしたボクシングの「キンシャサの奇跡」も有名だ

 ▼それらは本当に奇跡だったのか。開成高校野球部で監督を務める青木秀憲さん(43)の講演を聞くうちに「不思議な勝ち」はないのでは、と感じた。母校、太田高校の開校記念式典で9日に行った演題は「弱くても勝てます……というのはウソです」。開成高校の野球部を取り上げたノンフィクションのタイトルを否定してみせた

 ▼環境に恵まれない進学校が強豪を相手に勝負するすべを突き詰める。最低限必要なことを見極め、できることを見定めて工夫し、穴は残っても「爆発力のある攻撃」を武器とする

 ▼「ここだけは絶対ほかのチームに負けない技量を身に付けるというプライドが、弱小チームが強豪校に太刀打ちできる手段ではないか」

 ▼マイアミの日本代表は綿密な準備をし、アリは作戦を徹底した。日常、勉強でも、仕事でも「勝てない相手」が現れることはいくらでもある。ただ、戦い方はきっとあると信じたい。