▼山里の春の訪れは一足遅れだ。平野部では散ってしまったサクラも、北毛の山あいの地ではこれからが本番となる。新たな季節の到来に気持ちも弾む

 ▼片品村に、例年ゴールデンウイークに見頃を迎えるオオヤマザクラがある。樹齢300年と伝わる花咲地区の天王桜。静かな山村に県内外から人を集める観光名所だが、広く知られるようになったのはここ10年ほどのこと

 ▼長く地元の人たちに愛されてきたが、名物として売り出そうという発想はなかった。毎年きれいな花を付けたが「ことしも咲いたな」と当たり前のように眺めるだけだったという

 ▼豊かな自然環境の中で生活する人たちは、身近すぎて価値に気付かなかった。県外から来た人に「このサクラは人を呼べる」と助言され、半信半疑でPRを始めたところ反響が予想を大幅に超え、名所の一つに成長した

 ▼県北でも本格的な春の訪れとともに、観光客の姿が目立つようになった。富岡製糸場の 世界遺産登録という追い風を生かし、誘客へ あの手この手と知恵を絞る関係者は多いが、観光資源は自分たちの足元にも隠れていそうだ

 ▼増加を続ける外国人客には、山里の当たり前の風景も新鮮に映るだろう。“よそ者”の視点を受け入れる柔軟な発想があれば、それぞれの地域に眠る宝を まだまだ発掘できるのかもしれない。