今回は妊娠、出産、子育てにかかわる地域の周産期小児医療体制についてです。

 館林市邑楽郡の地域医療の中核を担う公立病院から、産科、小児科など複数の診療科が次々と撤退しました。医師臨床研修制度変更に伴う大学医局の人員不足から、各地域の基幹病院に派遣していた医師を大学に引き上げることとなったためです。産科は2005年、小児科は09年のことです。もう10年以上、産科と小児科の救急受け入れや入院治療、病院でのお産ができない状態が続いています。

 人口18万人の郡市内でお産ができる産院は一つだけになりました。現在、地元で出産を迎えるお子さんは全出生数の3~4割程度です。小児科医院も五つですから、人口からみると他地区より少ないです。全体でも少医師地域ですが、産科、小児科も同様かそれ以下の状況です。

 どちらの診療科も、救急や入院の場合は、県内であれば太田、県外では栃木の佐野や足利、埼玉の羽生の病院にお願いして受け入れてもらっています。重症な場合は、渋川の県立小児医療センターや、栃木の独協医大、自治医大にお願いしています。地域内でできるところまでがんばって対応していますが、もしもの場合は、遠方までの搬送対応となってしまいます。

 近くに小児科の後方支援病院がないということは、小児科以外の先生は小児の対応がしづらいでしょう。すると、夜間診療所や休日当番医の時間外診療への敬遠といった影響も生じかねません。乳幼児健診や園医・学校医の担い手も少なくなりました。産科医や小児科医が担えれば理想ですが、他科の先生方に多くをお願いしています。

 現状を医療提供側目線で書いてみましたが、実際はそれほど困っていないのでは、と思っています。住民のみなさんも慣れてきたのかもしれません。当初は署名運動などで何とか管内で周産期小児医療が完結できるよう願っていたと思います。今は、管内と他地区の医療機関を上手に使い分けたり、ネットで情報を取り入れたりして対応していると感じています。車、ネット時代への対応でしょうね。

 館林市では、妊娠・出産包括支援事業をいち早く取り入れました。妊娠から子育て期まで切れ目のない支援を目的としています。行政も、子育て環境づくりに重点を置いているのかなと感じています。

 少子社会となり、全国どこでも周産期小児の専門医療を提供できる時代は終わりを迎えたのでしょうか。これからは、子育て支援や予防医療がメインとなるでしょう。医療においても、近くのかかりつけ医が初期診療を広く浅く担い、それ以上の部分は他地域との広域連携をうまく使い分ける時代になっていくでしょう。そういう意味で、少医師地域の当郡市は新時代のモデル地区かもしれません。



こやなぎ小児科院長 小柳富彦 館林市富士原町

 【略歴】2006年開業、11年に病児保育室を開設する。館林邑楽地域の小児医療、子育て支援に関わる。館林市邑楽郡医師会理事。農大二高―自治医大医学部卒。

2020/3/12掲載