▼張り詰めた空気の中、読み手の発声と同時に指先が絵札を捉える。きのう前橋で開かれた上毛かるたの県大会。会場は鍛え抜いた技を競い合う子どもたちの熱気に包まれた

 ▼このかるたが生まれたのは1947年。戦争で荒廃した郷土に胸を痛めた群馬文化協会初代理事長、故浦野匡彦さんが、古里を愛する心を育てようとGHQ(連合国軍総司令部)の検閲の下、苦労して風物や偉人たちを44枚の札にまとめた

 ▼以来、子どもたちに親しまれてきたが、浦野さんの「かるたは公に帰すべき」との遺志を受けて一昨年、同協会から県に著作権と商標権が無償譲渡され、発行業務も県に引き継がれた

 ▼他県に例を見ない郷土かるたの成功例として、テレビや雑誌で取り上げられる機会が増えている。観光客でにぎわう富岡では、富岡製糸場を見学した人の群馬みやげとしても売れているという

 ▼県は本年度、1万部を発行したが、県外の書店からも注文が相次いだため、1月までに計1万部を増刷した。新年度は当初から2万部発行する予定で、かるたゆかりの地のガイドマップと合わせて観光PRに力を入れる

 ▼世代を超えて県民の記憶に深く刻まれ、心を一つにしてきた上毛かるた。群馬の名物や観光名所だけでなく、70年近くかるたを守り継いできた全県民の思いも全国に発信したい。