▼コウモリは超音波を発し蛾(が)を捕らえる。片や蛾には超音波を捉え、攻撃をかわす機能が備わる。だがシステムは双方100点ではなく、そこそこの65点。失敗もするから、ともに生きていられる

 ▼高崎東部小教諭の加藤久雄さん(53)が近著『65点の君が好き』(風雲舎)に書いている話だ。加藤さんには、自然の原理は「弱肉強食」ではなく「調和」で、「どんな命も一緒に生きていこう」というメッセージに思える

 ▼加藤さんは森の中に自然学舎「どんぐり亭」を開設、不登校の子や親たちのカウンセリングを私費で行っている。どんぐり亭を訪ね、初めてお会いしたのは2010年の夏の盛りだった

 ▼人は心に“愛情のコップ”を持っている-その時にうかがった話で強く印象に残った。周囲の励ましなどでそれは満たされ、困難にも立ち向かえるのだという。加藤さんの活動である

 ▼「何をしてもうまくいかない」。子どもの悲鳴に答える。「だからこそ、みんなで支え合って生きていこうとするんだと思います」「あなたの幸せを祈ってくれている人がきっといる」。加藤さんのまなざしは優しく温かい

 ▼人の命をいとも簡単に奪う事件が絶えず、暗たんたる思いだ。「でもね、それでも伝えたいんですよ」と加藤さんからのメールにあった。「それでも、世の中は目に見えない善意に満ちているんだよ、と」