前回、地形と水に着目することは都市の成り立ちをひもとくヒントになることを紹介しました。そして地形と水には、恵みと禍(わざわい)の二面性があることにも触れました。今回はそれらをテーマに大学の講師として取り組んでいることを紹介します。

 現在、法政大デザイン工学部の非常勤講師として「東京発掘プロジェクト」と題し、かつて「水の都」とも称された東京の町を題材に、その復権のための提案を学生たちと模索しています。東京山の手には湧水を水源とする都市河川が数多く流れていました。その多くはふたをされ流れを見ることはできません。また、下町低地には、運河や水路が縦横にはりめぐらされていましたが、それらの多くは埋め立てられています。

 東京発掘プロジェクトでは、埋もれている川や水路を発掘し、水辺と共にある暮らしをイメージして実現したい都市像を描いてください、と学生たちに問いかけています。提案する場所の立地条件や地歴、地形的な特徴など基礎的研究を行い、現地でフィールドサーベイを実施した上での提案を求めています。

 将来、都市計画や建築設計に携わる学生たちと「夢」を描きながら、実現の障壁となる既成事実や問題点をあぶり出すことも視野に入れています。留学生も多く、東京の特異性に気づくことが多い教育プログラムとなりました。

 2011年から17年までは、母校である東北大工学研究科の非常勤講師として講座を任されました。テーマを「環境」とし、地形や水のポテンシャルを生かした震災復興のオルタナティブを仙台の方々と模索しました。

 11年の東日本大震災と原子力発電所事故を受け止め、学生たちと描いたのは、再生可能エネルギーでCO2排出を抑え、非常時にもエネルギーが確保できる強靭(きょうじん)な復興まちづくりでした。地域循環型のエネルギー利用とライフスタイルがセットとなった「仙台モデル」の発信を試みました。

 さて、群馬には再生可能エネルギーが満ちあふれています。火山や温泉の多い土地ゆえ地熱は豊富ですし、冬の空っ風は他県の人からすると驚異的です。「理想の電化に電源群馬」と上毛かるたに読まれるように水力資源も豊富ですし、冬場の晴天率も全国トップクラスです。

 震災の爪痕が生々しく残る被災地を学生たちと歩きながら、託すべき将来像を思い浮かべたのが10年前。時に牙をむくこの国の自然は、見方を変えれば大きなポテンシャルを持っていると言えます。地形や水の恵みを享受し、脱炭素・再生可能エネルギーによる地産地消の循環型地域づくりは、他国がうらやむ豊かな国への一歩だと確信しています。あの震災から10年ですが、被災直後に抱いた「夢」と「志」は、ますます強くなっているのです。



東京スリバチ学会会 長皆川典久 東京都江東区

 【略歴】スリバチ状のくぼ地を観察・記録する東京スリバチ学会を2003年に設立。地形マニアとしてNHK「ブラタモリ」に出演。前橋市出身。前橋高―東北大卒。

2021/03/07掲載