▼新しい年が明けた。干支(えと)は正式には「乙未(きのとひつじ)」。十干と十二支の組み合わせで、60年に1度巡ってくる

 ▼前回の乙未である1955年、群馬ではどんなことがあったろう。年表を開くと、2月には、群馬交響楽団(群響)草創期の団員をモデルにした映画『ここに泉あり』(今井正監督)が前橋と高崎で公開されたとあった

 ▼群響は、この10年前の45年11月、「高崎市民オーケストラ」として誕生した。終戦直後の混乱のなか、しかも人口の少ない地方都市で楽団を運営という無謀とも言える取り組みだった。関わった人々の苦難の物語に触れるたびに、奮い立たされる

 ▼〈人々の心に希望の灯をともさねばならぬ。ものがなくてもできる運動、それは何か。(略)音楽だ。今、人々の心に灯をともせるのは音楽だけだ〉。設立の中心になった一人、井上房一郎さんが当時の熱い思いを語っている(『私の美と哲学』)

 ▼昨年、久しぶりにこの映画を映画館で見ることができた。〈心に灯をともす〉文化のもつ力と、そのかけがえのなさをあらためて感じさせてくれた。メッセージは時を経て、さらに強い光を放っている

 ▼群響の結成、そして終戦から70年を迎えた。困難で重要な課題が山積するこの国はどこに向かうのか。戦後、先達が 平和な文化国家を希求し、積み重ねてきた努力とその精神に学びたい。