▼『みなかみ紀行』などを著し、本県にも足跡を残した歌人、若山牧水は旅を愛し、酒を愛したことで知られる。酒を詠んだ歌で代表的なのは〈白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけれ〉か

 ▼歌人の生涯は43年。死因は肝硬変だった。〈おひおひに酒を止むべきからだともわれのなりしか飲みつつおもふ〉という歌も残した牧水は長年にわたる生活習慣で飲めない体になっていたという

 ▼生活に豊かさと潤いを与える酒は度を超すと、自身の健康を損ね、家族や周囲に迷惑と犠牲を強いる。また、不適切な飲酒がドメスティックバイオレンスや交通事故死などの社会問題を引き起こした例は枚挙にいとまがない

 ▼そうした事態に対処するため、アルコール健康障害対策基本法が超党派の議員立法で成立し、施行されたのがことし6月。今月10日から16日までは基本法で定めた初めてのアルコール関連問題啓発週間となっている

 ▼新酒の季節を迎え、ボジョレ・ヌーボーの解禁が間近に迫ったこの1週間、内閣府が中心となり、関係機関がアルコールに起因するさまざまな問題の周知を図ることにしている

 ▼〈足音を忍ばせて行けば台所にわが酒の壜(びん)は立ちて待ちをる〉。酒を愛する人の中には牧水の歌に誘われて、台所に向かう人もいよう。そうした場合でも適量だけは心がけたい。