▼アガサ・クリスティの短編「スズメ蜂の巣」は、事件を未然に防ぐべく活躍する名探偵ポワロを描く。危険の芽を察知したポワロは、観察力と推理を駆使して的確に状況を判断し、先手を打つ

 ▼前兆というべきさまざまな事実を積み上げ、一つの結論を予測したわけだが、火山観測の場合はそう簡単にはいかないようだ。長野、岐阜両県にまたがる御嶽山(おんたけさん)の噴火は、予測の難しさをあらためて浮き彫りにした

 ▼御嶽山は常時観測火山の一つで、気象庁のデータでは微妙な変動が事前に検知されていたという。しかし噴火の前兆との判断に至らず、予知は「技術的に限界がある」。何とも無力感が漂う

 ▼災害のたびに防災対策は進んできた。浅間山や草津白根山を含む110の活火山が分布する日本列島である。御嶽山噴火を契機に、予知や監視態勢の強化が検討されることだろう

 ▼時に人知を超える自然の猛威。突発的な災害では「個人の判断、選択、行動が生死を分けることが多い」とは、お天気博士、倉嶋厚さんの言葉だ。いざという時、的確に状況判断するため、知識の習得や心構えも「日頃の備え」の一つに加えたい

 ▼御嶽山では懸命な救助活動が続く。本県の災害派遣医療チーム(DMAT)や陸上自衛隊第12旅団も現地で活動している。今はこれ以上、犠牲者が増えないことを祈るばかりである。