▼「もはや『戦後』ではない」。この言葉で結ばれた経済白書『日本経済の成長と近代化』が発表されたのは、1956年の7月17日。終戦から10年余りがすぎ、復興後の経済成長の難しさを見通したものだという

 ▼しかし、国民は高度成長への展望を開くものと受け止め、流行語になった。その期待通り、先の大戦を最後に他国と戦火を交えることなく、日本は経済大国への道をひた走って未曾有の繁栄を遂げた

 ▼前橋市が来年の終戦70年の節目に向け、市民ミュージカル「灰になった街」の上演に動きだした。45年8月の前橋空襲を素材にしたもので、50人ほどの出演者を募っている

 ▼米軍爆撃機、B29による大編隊は市街地の8割を焼き、500人以上の尊い命を奪った。戦争を生き延びた世代が少なくなる中、多くの市民が犠牲になった戦禍の記憶を伝えていくという

 ▼「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍晋三内閣は、憲法解釈を変えて集団的自衛権行使の容認を閣議決定。自衛隊の海外派遣に恒久法を検討するなど、他国の戦争に加わることができる国への転換を進めている

 ▼「もはや『戦後』ではない」。平和の維持を大前提に、国民はかつてこの言葉を新しい時代を切り開くスローガンとして受け止めた。白書の発表から58年。時代を「もはや戦前である」に戻してはならない。