北京冬季五輪・パラリンピックの開幕が近づいてきました。選手の活躍はもちろんですが、注目してほしいのがメダリストに表彰台で渡されるビクトリーブーケです。

 五輪でブーケが定着したのは1984年のロサンゼルス大会からではないでしょうか。花束には開催地それぞれの思いが込められています。

 98年長野は、地元で生産が盛んなアルストロメリアで聖火をイメージしました。2000年シドニーはワラタやカンガルーポーというオーストラリアの固有種でできたもの。大変ユニークで目を引きました。04年アテネは五輪発祥の地らしく、平和を象徴するオリーブの葉がふんだんに使われたデザイン。08年北京は赤いバラをメインに、ヒペリカムの実やヤブラン、ギボウシなど数々の葉物を尖塔(せんとう)形に組んでいました。

 注目すべきは10年バンクーバーです。フィギュアスケートの浅田真央選手と金?児(キムヨナ)選手の頂上決戦が話題になった大会でした。グリーンのキクとヒペリカムの実をメインにしたブーケ。麻薬中毒や元服役者、あるいはDVなどで心を閉ざした人たちが社会復帰を目指すためのトレーニングとして制作に携わり、社会貢献的な意義が大きかったとされています。

 12年ロンドンは4色のバラをメインにラベンダーやローズマリーなどのハーブに小麦の穂を加えたもの。良い香りを放つフレグランスブーケだったと想像します。英国の花はバラのイメージがありますが、意外にも商業生産していなかったので五輪に向けて作付けを行ったそうです。

 16年ブラジルでは、選手が自国に持ち帰れず現地でごみになってしまうという理由から制作が見送られました。代わりに授与されたのは大会エンブレムをかたどったプチオブジェ。体操の白井健三選手が「歯ブラシ立て?」とほほ笑んだことが話題になりました。

 復興五輪と位置付けられた昨年の東京大会は、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の東北3県で作られた花を使いました。リンドウやヒマワリ、トルコギキョウ、ナルコランを東京産のハランで束ねました。パラではヒマワリの代わりに宮城県産のピンクのバラが入り、いずれも美しい色彩のブーケになりました。ブラジル大会での「持ち帰れない」問題をクリアしようと公式マスコットの人形が添えられました。

 小さな花束一つに多くのメッセージやストーリーが詰まっているのです。

 さて、北京大会ではどのようなブーケが登場するでしょうか。北京市の花がバラであることから、赤バラの可能性が高いと予想しています。会場装飾でも中国らしい花が使われるのではないでしょうか。競技とともに、ぜひ花にも注目して楽しんでください。

 【略歴】大田花き商品開発室を経て、2016年から現職。NHKラジオで花の市場だよりをリポートしている。日本フローラルマーケティング協会理事。藤岡市出身。
 

2022/1/13掲載