▼リチャード・ニクソンといえば、1960年の米大統領選でジョン・F・ケネディに敗れ、大統領就任後はウオーターゲート事件で辞任に追い込まれた人物との印象が強い

 ▼だが、ベトナム戦争を収拾し、中国との友好関係を回復させた功績は大きい。副大統領や大統領在任中などに日本をはじめ世界80カ国を外遊しており、戦後の指導者で会わなかったのはスターリンくらいというから、戦後史を語る上でも貴重な存在だった

 ▼22日が没後20年だったニクソンは生前、そうした経験を著書『指導者とは』に書き残しており、その中に次の一節がある。「経営者は今日と明日を考える。指導者は明日の一歩先を考えねばならない」

 ▼きのう開かれた安倍晋三首相とオバマ米大統領の日米首脳会談。米側は中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島をめぐり、日米安全保障条約に基づく防衛義務を表明した▼一方、環太平洋連携協定(TPP)交渉では溝が埋まらず、会談終了後も担当閣僚が交渉を続ける展開となった。障壁となったのは農産物や自動車の関税。米国の場合、秋の中間選挙も譲歩できない背景にあるようだ

 ▼ニクソンは先の一節に続けて「指導者は歴史の針路を扱う」と書いた。台頭する中国を牽制(けんせい)する意味合いもあるTPP。両国の指導者の決断は明日の一歩先の環太平洋地域を左右する。