えんじ色の和服姿の名人は深々と頭を下げ、足早に浦安の間を後にした。滋賀・近江神宮で行われた第68期百人一首かるた名人戦。安中市出身で4連覇を懸けて防衛戦に臨んだ粂原圭太郎さん(30)=京都市=は、川瀬将義さん(27)=静岡県=との5番勝負に1対3で敗れた

 ▼小学生の時に上毛かるたを経て百人一首を始め、高校で全国制覇。京都大に進むと大学選手権を3連覇した。名人初挑戦は26歳。この時ははね返されたが、翌年に念願の頂点に立ち、2度の防衛を果たした

 ▼札を自由に並べ替えることが認められている競技かるたで、自陣の右上段に多くの札を配置する戦法を用いる。相手からの距離が近く、取られやすいリスクを負って敵陣を攻める

 ▼かるた界の常識を覆した陣形は「異端」と呼ばれた。だが武器であるスピードを最大限生かすために試行錯誤してたどり着いた形。型にとらわれず、さらなる進化を思い描く

 ▼名人戦が終わってすぐ、ツイッターで「完敗でした。来年、精進してリベンジに来ます!」とつぶやいた。小学生の時から指導してきた前橋かるた会の猪熊静枝さんは「悔しさを表に出さないが、誰よりも負けず嫌い」と話す

 ▼本人は「成長が止まっていた。負けてむしろ前向きになれた。来年に向け、わくわくしている」とさばさばとした様子。通算7期で獲得できる永世名人を目指して、挑戦を続けるつもりだ。