▼「摩(す)れあへる肩のひまより はつかにも見きといふさへ 日記に残れり」。石川啄木の『一握の砂』(朝日文庫)に収められた一首である。脚注に美人を見つけると後をつける「好き歩き」を金田一京助らと楽しんだとある

 ▼今の世ならストーカーと見なされそうな「好き歩き」だが、なにぶん明治時代のこと。意中の女性を人の肩越しに少し見かけただけで胸ときめかす、それだけの行為だったのだろう

 ▼欧州では2月14日のバレンタインの日から小鳥が交尾を始めると言われてきたと、お天気博士の倉嶋厚さんが書いていた。日本でも「鳥の妻恋」という季語があり、2月になると鳥が異性を呼ぶ囀(さえず)りを始める

 ▼マウスにもラブソングがあるらしい。雌が交配する相手を選ぶときに、雄の歌うような鳴き声で決めているとの研究結果を、麻布大などのチームが発表した

 ▼求愛歌は超音波領域で人には聞こえない。血統ごとにメロディーが異なるが、自らが聞いて育ったメロディーとは違う歌を好むようで、近親交配を避ける手がかりになっているという

 ▼人間界に話を戻すと、啄木の時代に比べ恋愛ははるかに自由になったが、一方で「少子化」「婚活」が話題に上る。雪をすぐに解かすほど日の光は強くなり、心弾む季節がやってくる。たとえラブソングは歌えなくてもすてきな出会いがあるといい。