▼〈ねぎとこんにゃく下仁田名産〉。上毛かるたの絵札のネギが「下仁田ネギではないのでは」と大沢正明知事が疑問を投げ掛けた

 ▼かるたが出来たのは戦後間もないころ。「殿様ネギ」として献上された高級品だから、容易に手に入らなかったという推測もうなずける

 ▼日に日に寒さが増すこの時季になると、思い出すネギがある。下仁田町の上原一正さん(72)が作る「昔のネギ」。丈がすっと70センチを超え、白根もあまり太くない。店頭に並ぶ主流とは異なり、かるたの絵札に似ていなくもない

 ▼「下仁田ネギ発祥の地」とされる土地は柔らかで、十分な日照と寒暖の差を生かし、伝統を守る。種を厳選、さらに夏に苗を選抜する。秋に土を高く寄せ、長い白根を作り、霜を待つ。種取りから15カ月。「商売にしようとしないから続けられる」。親せきや知人に配るだけの文字通り「幻のネギ」

 ▼〈下仁田ネギは実に香ばしい。寒さと霜で葉が枯れると、葉に溜たまっていた甘みが茎の部分に下りていく。それを焼いて食べると格別の味がする〉。直木賞作家、藤田宜永さんの短編『老猫の冬』にある

 ▼上原さんにもらった「昔のネギ」で試みる。白い茎を表面が真っ黒になるまで焼く。焦げた部分をむいて、口に放り込む。とろりと溶けるような感触、ぱーっと甘み広がる。辛口の地酒があれば最高の冬になる。